<エピローグ>

翼「・・・すげぇ」

一瞬のうちに真田と若菜を叩き伏せた佐藤に、翼は感嘆の声を上げた。
当の佐藤は、気を失っている二人の頬に書かれている一本傷の上に二本目を書き、真田にハゲヅラを、若菜には鼻メガネを着けさせている。
それからペンで、二人の顔に落書きを始めた。

翼「・・・どうしたの、それ」
佐藤「ポチとタツボンからもらった」

落書きに参加しつつ、翼が佐藤に尋ねる。

翼「・・・ってことは、今残ってるのってお前とマサキだけ?」
佐藤「いや、黒川は俺が倒したで」
翼「じゃあ、お前が優勝?」
佐藤「そーゆーことやな」
翼「・・・そっか。おめでと」

翼のその言葉に、佐藤は目を丸くする。

佐藤「おめでとって・・・姫さん分かっとるん? 俺が優勝ってことは、俺と姫さんで旅行に行くんやで」
翼「もちろん、分かってるよ」
佐藤「実はすご〜〜く嫌やったり、せぇへん?」
翼「・・・嫌じゃないよ」

にっこりと笑って翼は言った。

翼「だって、俺が好きなのはお前だからね」
佐藤「・・・え、ホンマに!?」
翼「本当だよ。だから、優勝したのがお前で、嬉しいんだ」
佐藤「姫さん・・・」

佐藤は翼の頬にそっと手を伸ばした。

佐藤「俺がもっと早う来てたら、姫さんの顔にこんなん書かせんかったのに・・・」
翼「佐藤・・・。いいんだよ、それはもう・・・」
佐藤「もし、最後に俺と姫さんの二人っきりになったら、姫さんに勝ちを譲ろう思ってたんや。姫さんが、姫さんの好きな奴と一緒に行けるように」
翼「そうだったんだ・・・。優しいんだな、意外と」
佐藤「意外と、は余計や・・・」

くすくすと笑い合う二人。甘い空気が流れる。

翼「そういえば、天城も言ってたっけ。俺が俺の好きな奴と旅行に行けるようになるのが、一番の結末だって」
佐藤「確かに、最高の結末やな」
翼「(くすっ)そうだね」
佐藤「・・・なぁ、姫さん、」
翼「何? 佐藤」

翼がそう返すと、佐藤はやんわりと苦笑する。

佐藤「両思いになったんやし、『シゲ』って呼んでくれや」
翼「分かったよ。・・・シゲ」
佐藤「姫さんにそう呼んでもらえるなんてめっちゃ嬉しいわ」
翼「それは光栄だね。で、何?」
佐藤「俺、今日は姫さんのために戦って、めちゃくちゃ疲れたわ〜。姫さんがキスしてくれたら、一気に回復すると思うんやけどvv」

佐藤のその言葉に、翼が一瞬硬直する。
まずったかな〜、と佐藤が翼の様子をうかがうように彼を見ると、

翼は、ふっと花のように微笑んで、言った。



翼「シゲが俺のこと、『翼』って呼んでくれたらね」



<残り1人/ゲーム終了 優勝者・7番佐藤成樹>





玲「優勝おめでとう、佐藤くん」

教室に戻ってきた佐藤と翼を迎え(真田と若菜は意識を取り戻すと、ラブラブで甘い空気の中、二人に気付かれないようにそっと一足早く教室に戻ったのだった)、玲は優勝者の佐藤に祝福の言葉をかけた。

玲「想いが通じて良かったわね、翼v」
翼「良く言うよ、思いっきり楽しんでたくせにさ」
玲「まぁね。いっぱい楽しませてもらったわv だから、これからはあなた達が楽しむ番よ。
はい、これが旅行券。仲良く行ってきなさいね」

玲は佐藤にのし袋を差し出す。

佐藤「おおきに、姐さん」
翼「言われなくても、楽しんでくるよ」
藤代「・・・いーなー、佐藤・・・」
水野「俺も同じ気持ちだよ、藤代・・・」
黒川「(やっぱりあいつだったのか・・・)・・・良かったな、翼」
天城「ああ、本当に良かった・・・」
将「翼さん・・・すごく嬉しそうだね」
不破「佐藤もそのようだな」
鳴海「デレデレしやがって、ちくしょー!!」
吉田「妬かない妬かない。みんな悔しいんにゃから・・・」
高山「俺なんか、九州からわざわざ来たんやぞ!」
潤慶「国内ならいいじゃない。ぼくは韓国から来たのに、最初にやられたんだからね」
須釜「でも、場所だけで言うなら、天城くんのドイツが一番遠いよね〜」
山口「遠さを競ってどーすんだよスガ・・・」
渋沢「遠いと不利だが・・・しかし近ければいいというわけでもないぞ」
杉原「そうですよね。身近にライバル多いし」
上原「この参加者22人中、都選抜メンバー何人いるんだ?」
桜庭「えっと・・・椎名抜いて、元いた天城と追加の不破を入れると14人だな」
三上「随分多いじゃねぇか」
若菜「都選抜チームの半分は椎名に惚れてたワケか・・・」
真田「改めて考えると、なんかすげーよな」
郭「それでも、椎名が選んだ奴は、都選抜メンバーじゃないんだよね」

一同「ハァ・・・・(溜め息)」

玲「がっかりする気持ちは分かるけど、このままじゃいつまでも終われないわ。ほらほら、みんな席に着きなさい」

そう促すと、皆が力無く席に戻っていく。
全員が席に着くと、玲は咳払いを一つして、

玲「みんな、本当にご苦労様でした。名勝負、迷勝負、色々あったけれど、みんな立派な戦いぶりだったわよv
・・・さて、最初にも言ったと思うけど、敗者のみんなにはこれから校舎内を清掃してもらうからね。翼も敗者なんだけど・・・まぁ、佐藤くんとデートでもしてらっしゃいな」
一同「え〜〜〜〜〜!!?」
翼「・・・だってさ」
佐藤「じゃ、お言葉に甘えてデートしてこよかv」
玲「あ、でも忘れないでね。家に帰るまでがバトルロワイアルです。みんな、くれぐれも気を抜かないように」
三上「何だそりゃ!!」
杉原「『家に帰るまでが遠足です』、じゃないんだから・・・」

そして、玲は皆を見回して、にっこりと笑った。

玲「それじゃあこれで、

第一回椎名翼杯バトルロワイアルを終わります」



一同「・・・・・は?」



翼「玲・・・『第一回』って、何?」
玲「あら、言わなかったかしら。これがうまくいったら、二回目もやるって」
翼「初耳だよ!!」
鳴海「・・・ってことは・・・」
吉田「まだチャンスはあるってことなん・・・?」
佐藤「ちょお待ち! 誰にも翼は渡さんで!!」
玲「あらあら大変ねぇ。佐藤くんにとっては防衛戦ね、ふふっ♪」



一同「次こそ、絶対に優勝してやる〜〜!!」
翼「こんなゲーム、一度で充分だ―――!!!」




青い空に、少年達の魂の叫びがこだまする。
玲は一人、とても楽しそうに笑んでいた。


少年達の戦いは、まだまだ続く・・・。




                                                       <END☆>