<2ROUND>
時計が10時を指してすぐに、校舎内に玲のうきうきした声が響いた。
玲「ハーイ、10時になりましたー。放送の時間でーす。それじゃー失格者言うわね。ちなみに失格した順よ。
えっと、1番李潤慶くん、11番須釜寿樹くん、13番高山昭栄くん、14番天城燎一くん、以上4名です。うーん、まあまあのペースかしら? この調子でみんな頑張りなさいね。
次に禁止エリア言うわね。屋上、2−1の教室、理科室でーす。もう入れないわよー。
それじゃあ引き続きゲームを楽しんでねっ♪」
放送はこれで終わった。
ところ変わって、こちらは3−1の教室。
教室に戻ってきた失格者達が何やら会話している。
高山「楽しんでねっても・・・さっさと脱落した俺達はどーしろっちゅーんだ?」
須釜「監視カメラの映像観て楽しんでればいーんじゃない?」
潤慶「それもそっかv」
須釜「ところでさ〜、みんなは誰が優勝すると思う〜?」
高山「うーん、やっぱあの糸目ばいね、都選抜の」
天城「ああ、杉原か」
高山「あいつに勝てる奴は中々いないと思うぜよ」
潤慶「ぼくは英士だと思うな。君は誰だと思う?」
天城「・・・俺は、椎名に優勝して欲しい」
須釜「健気だねー」
天城「・・・・・・」
須釜「ぼくは風祭くんかな。純粋さと腹黒さを兼ね備えた彼なら・・・」
玲「あら、面白そうな話してるわね」
放送室から玲が帰ってきた。
玲「私も話に入れてもらえないかしら」
須釜「いいですよー。監督は誰が優勝すると思いますー?」
玲「どーでもいーけど、あなた話し方がちょっと鳴海くんと被ってるわね」
須釜「そうですか〜?」
玲「・・・まあいいわ。ええと、誰が優勝するか、だったわね?」
潤慶「はい」
玲「そうねぇ・・・佐藤くんかしら」
須釜「佐藤? 藤村くんのことですか?」
高山「あのパツキン男か?」
玲「そうよ。でもこの話では佐藤で統一してあるのよ」
須釜「そうなんですか。でも、さすが監督、いい読みですねー」
玲「でも、ゲームはまだまだこれからよ・・・」
そう言って、玲は監視カメラの映像に熱いまなざしを向ける・・・。
<残り18人>
水野「2−1にはもういられないな・・・。次はどこに行こうか」
身を潜めていた場所が禁止エリアに指定されたため、移動を開始する水野だった。
水野「でも、よく考えると、このゲームは実際の殺し合いじゃ無いんだから、隠れる必要なんてそんなに無いのかもな。接近戦に持ち込めばいいわけだし・・・」
?「見つけたぞ、水野!」
廊下を歩いていた水野の前に、桜庭が立ちはだかった。
桜庭「今日こそ積年の恨み、晴らしてやる!」
水野「積年の恨みって・・・。俺、お前に何かしたか?」
桜庭「っかーとぼけやがって! 夏の選抜合宿の時、お前、俺にビブス投げ付けたじゃねーか!!」
水野(・・・そうだったっけ?)
首を傾げる水野。
桜庭「はっ・・・そーか覚えてねーか・・・。無理もないか、あの時お前、自分は不合格たって勘違いしまくってたからな」
水野「う・・・(それは覚えてる)」
桜庭「椎名はあの試合の本質にいち早く気付いてたらしいけどな。さすがは椎名だよなー誰かさんとは大違い」
水野「ふ、藤代だって気付いてなかったじゃねーか!」
桜庭「今は藤代は関係ねーだろ!!」
藤代「はーっくしょん!」
その頃、大きなくしゃみが出た藤代だった。
桜庭「とにかく、お前は椎名にふさわしくねーんだよ! このヘタレ!!」
水野「ヘタレって・・・。ヘタレは真田だろ!!」
真田「っくしゅっ!」
今度は真田がくしゃみを出していた。
桜庭「お前も充分ヘタレだよ、この甲斐性なし!」
水野「何言ってんだ、脇キャラのくせに!!」
グサッ!!
桜庭に一万ポイントのダメージ!!!
桜庭「・・・てめえ・・・言ってくれるじゃねーか・・・。お前なんかな、額に肉と書いて馬鹿にしてやる!!」
水野(マサル―――!!?(ガビーン))
桜庭「いくぜっ!」
水野「くそっ・・・」
ペンを手に襲いかかってくる桜庭に、水野は支給武器のトマト三つのうち、一つを投げ付けた。
桜庭「(びちゃっ)わっ!」
水野「えい!(ぐしゃ)」
水野は桜庭の顔に当たったトマトをさらに押し潰して彼になすりつけると(←酷い)、頬にペンを走らせた。
水野「これでよし。・・・っと、そうだ」
と、何かを思い付いた水野は、桜庭の額に肉と書き込んだ。
水野「なかなか似合ってるぜ・・・ぷぷっ」
桜庭「似合ってたまるかー!!」
水野「そういうわけで、椎名のことは俺にまかせて、お前はもう帰れ」
桜庭「さっさとやられちまえ、ちくしょー!!」
水野は悔しがる桜庭に背を向けて立ち去ろうとした・・・が。
水野「桜庭」
桜庭「まだ何か用かよ」
水野「お前の武器って何だったんだ? 使わなかっただろ」
桜庭「・・・軍手だよ」
水野「使えないな」
桜庭「だから使わなかったんじゃねーか!」
水野「ところで、シゲ・・・いや、金髪で関西弁の奴見なかったか?」
桜庭「トートツだなオイ・・・。そんな奴、別に見かけなかったけど」
水野「そうか・・・じゃあな」
水野は去っていった・・・。
桜庭「ちきしょー水野の奴・・・顔がトマト臭くなっちまったじゃねーか。とりあえず顔洗うか・・・」
桜庭は水道に向かった。そして備え付けの鏡に自分の姿を映す。
桜庭「おまけに額に肉なんて書きやがって。世紀の美男子が台無しだぜ、ったく。さて洗うか・・・っと、張り紙? 何々・・・」
『この水道はただ今壊れていて使えません。』
桜庭「・・・・・・。」
<残り17人>
三上「ち、この教室にも誰もいねーか」
三上はターゲットを捜して校内を歩き回っていた。
三上「ここには誰かいっかなー・・・」
三上は更衣室の戸を開けて中に入った。するとそこには驚いた表情の上原がいた。
三上「あ? 誰だお前」
上原「え? あんた俺のこと覚えてないの? 夏の合宿で同室で、チームだって同じAだったじゃん」
三上「ああ、そういえばいたなぁそんな奴。影薄かったけど」
上原「ガーン・・・今をときめく(←?)東京都選抜の17番、上原淳に向かってそれはないだろ!」
三上「俺よりファンも出番も少ないくせにナマ言ってんじゃねーよ!」
上原「うっ・・・うるさーい!!」
上原は半泣きで三上に向かっていく。手にはタバスコ。しかも『超激辛』とラベルが貼ってある。
そんなものが目or口に入ったら堪ったもんじゃない。
そこで。
三上「あーっ! あんなとこに椎名が!!」
上原「えっ、どこどこ?vv」
三上「馬鹿め!!」
三上は上原が視線を逸らしたスキに彼の手からタバスコを取り上げた。
上原「あι」
三上「さぁどうする? 目と口、どっちが良い?」
タバスコを手に、デビスマ(=デビルスマイル)を浮かべながらじりじりと上原に詰め寄る三上。
上原「・・・降参します。」
三上「そうこなきゃな」
がっくりと頭をうなだれる上原の頬に、三上は大きく×を書いた。
<残り16人>
郭「あ」
山口「・・・げ」
ばったりと、図書室で出くわした郭と山口だった。
郭「『げ』はないでしょ。失礼だな」
山口「ああ、悪かったι」
郭「ところでその一本傷、誰に付けられたの?」
山口「お前らんとこのチビだよ」
郭「ああ、風祭か」
山口(スキありっ!!)
山口は水鉄砲を取り出し郭を撃った。
が、郭はすぐそばの本棚の本を手にし水を防ぎ、同時にもう一方の手で辞典(!)を山口に投げ付けた。
山口「(ドカッ)ぎゃっι」
頭に食らって仰向けに倒れる山口。郭は近くにしゃがみ込み、彼の頬にペンを走らせた。
郭「軽いね」
山口「痛てて・・・ちきしょー、こんなあっさり負けるとはね。さっき助かった意味がないな・・・」
郭「ところで、この本、この学校の備品だろ。こんなに水びたしにしちゃってどうするの?」
山口「どうするって・・・お前が勝手にそれ使ったんじゃねーか」
郭「先に撃ってきたのはそっちでしょ」
山口「まぁそうだけど・・・」
郭「そういうわけで弁償よろしく」
郭は山口の水鉄砲をさっとかすめ取ると、素早く部屋を出て行った。
山口「あっ、おい!
・・・何か俺って損なな役回りだな・・・ハァ」
山口はびっしょり濡れた本を見て、深い溜め息を付いた。
<残り15人>
藤代「あーあ。みんなどこにいるのかなー。誰にも会わないよ。まー武器がこれじゃあ会ったところでどーしよーもないけど」
藤代は一階の廊下を歩きながら、支給武器の輪ゴムを伸ばして遊んでいた。
藤代「キャプテンと三上センパイはまだ残ってんのかな」
と、その時背後に何者かの気配が!!
藤代「誰だっ!?」
藤代が振り向くと、そこにはハゲヅラをかぶった渋沢がいた。
藤代「ぎゃーはははははっ!!」
渋沢「笑うな藤代!!」
前にもこんなシーンがあったと思ったアナタは鋭い!!(爆)
藤代「キャプテン、そのヅラ似合いすぎっスよーあはははは!!」
渋沢(似合ってるのか―――!!?(ガーン))
藤代「あーすげー面白ぇー! 三上センパイとか椎名に見せたーい!!」
渋沢「・・・・・・(怒)」
笑い転げている藤代に渋沢は無言で近づく。そして、
渋沢「(キュッキュッ)」
藤代「あははははーって、あ゛ー!! どさくさにまぎれて書きましたね!? ヒドイっすよキャプテン!」
渋沢「・・・藤代」
藤代「何スか?」
渋沢「寮に戻ったらニンジン料理フルコースな(にっこり)」
藤代「えええっ!? な、何でっスか!!?」
渋沢「何でもクソもない! 食わないって言うなら、無理やり口に突っ込むからな!」
藤代「ギャー!! あんまりっスよキャプテーン!!」
翼「あーもううるさいな! さっきから何やってんのさ!!」
と、二人の声を聞きつけた翼がやってきた。
藤代「あ、椎名っv」
渋沢「し、椎名!?」
翼「―――って、何、渋沢そのヅラ! 似合いすぎだよ! あははははっ」
渋沢「(やっぱり似合ってるのか? 俺が老け顔だからか?? いや、そんなことよりも、椎名にハゲヅラをかぶった俺を見られた・・・!? な、何てことだ・・・!)む、むおー!!」
何だか色々とショックを受けた渋沢は、その場から走り去った。翼は唖然としてその姿を見送る。
翼(・・・むおーって何さ・・・)
藤代「わーい、椎名だ椎名だ♪」
翼「抱きつくなっ!」
ちゃっかり藤代が抱きつこうとしたので、慌てて避ける翼。
藤代「ちぇっ、けちー」
翼「・・・ところでさ、藤代は渋沢にやられたのか?」
藤代「うん、俺が笑ってる隙にさ。ひどいよなーキャプテン」
翼「けど、こんなんでも一応真剣勝負なんだし、隙見せた方が悪いよ。じゃあな、藤代」
藤代「あ、待って椎名」
翼「何?」
藤代「俺もう負けちゃったからさ、俺の武器あげるよ。ハイv(これで俺の株アップv)」
翼(・・・輪ゴムなんかどーしろと・・・)
<残り14人>
鳴海「あ〜極楽極楽♪」
鳴海はその頃、校長室のイスに座ってふんぞり返っていた。
鳴海「一度このイスでゆっくりしたかったんだよね〜」
その時、扉をノックする音が・・・
鳴海「入ってま〜す。
・・・・・・って、違うだろ!!」
うっかり返事をしてしまった鳴海は支給武器のおたまを持ち、身構えた。
はたから見るとかなりまぬけな姿である。
鳴海「うるせ〜ぞ、ナレーション!」
はいはい、失礼しました。
・・・で、校長室の戸ががらっと開けられた。入ってきたのは・・・
鳴海「黒い―――!!」
黒川「黒さはどーでもいい!!!」
言うまでもなく黒川だった。ちなみに鼻メガネは着けていない。
鳴海「まだ残ってたのかよ。しぶとい奴だな」
黒川「お互い様だろ」
鳴海「俺さ〜前からお前のことムカついてたんだよな〜。いつも椎名とイチャイチャしてるし、保護者ぶってるし、おまけにモブで一緒にいやがって」
黒川「何言ってんだか良くわからねぇけど・・・お前、てゆーか皆、誤解してるだろ」
鳴海「何が」
黒川「俺と翼はそんなんじゃねーよ。俺の完璧な片思いなんだから」
鳴海「え゛、マジ?」
黒川の口から明かされた衝撃的な真実に目を丸くする鳴海。
黒川「マジ。あいつの好きな奴が誰なのかは知らねーけど、俺じゃねぇよ」
鳴海「そっか〜・・・なら俺にもまだチャンスはあるわけだ」
黒川「いや、それはない。」
鳴海「即答!!?」
黒川「お前じゃねーことも確かだよ」
鳴海「くっそ〜! じゃあ、優勝して、無理やりにでも椎名を手に入れてやる!」
と鳴海は左手におたま、右手にペンを持って黒川に向かっていった。
黒川「そーゆーこと言ってっから嫌われんだよ!」
流石はケンカで鍛えた黒川、さっとよけると、すぐに鳴海にペケ傷を書いた。
黒川「翼が好きな奴が俺じゃなくても、俺はずっと翼のそばにいたんだ、簡単には渡せない。特に、お前みたいなヨコシマな奴にはな」
鳴海「誰がヨコシマだ、誰がっ!」
黒川「お前以外に誰がいるんだよ。・・・ああでも、参加者の中に何人か怪しい奴がいるか・・・。
とにかく、お前はこれで終わりなんだから、さっさと教室戻れよ。じゃあな」
黒川は校長室を出ていった。
鳴海「あ〜あ、負けちまったか。黒川にも色々言われるし、面白くね〜な。
・・・それにしても、椎名の好きな奴って一体誰なんだ? 黒川じゃねぇとすると・・・あのチビか? それとも同学年だし渋沢か? 藤代も椎名によく懐いてるよな〜。意外なところで水野とかU−14の奴らか?
う〜ん、気になるな〜・・・」
<残り13人>
