<1ROUND>

潤慶「さ〜って、ぼくの武器は何かな〜♪」

一番に出発した潤慶は被服室に着いていた。
わくわくしながらバッグの中の支給武器を取り出す。

潤慶「・・・何コレ」

中から出てきたのは、おたふくのお面だった。

潤慶「こんなんでどーやって闘えって言うんだか・・・。とりあえず着けてみよっと」

潤慶はお面を被り、鏡に自分の顔を映してみた。

潤慶「・・・何かマヌケだな・・・。あ、でもコレつけてればペケ傷書かれないじゃん♪ ある意味ラッキーかも」

と、その時ドアが開く音がした。潤慶が振り向くと、そこには鼻メガネを着けた色黒の人物がいた。

潤慶「あはははははは!!」
黒川「笑うな―――!!」
潤慶「だって君ソレ・・・面白すぎだよ!」
黒川「人のこと言えねーだろお前も。・・・やっぱ着けるんじゃかった・・・」
 
黒川は溜め息を付いて鼻メガネを外し、ペンを構えた。

潤慶「確か君は・・・マックで一緒に食事した、椎名のお付きの者その1!」
黒川「誰がその1だっ!!」
潤慶「英士から聞いたよ。君、すごく椎名と仲が良いんだって?」
黒川「・・・だったらどーすんだよ?」
潤慶「もちろん、真っ先に倒すよ。わざわざ韓国から来たんだ、絶対に椎名を手に入れてみせる」

潤慶は不敵に笑ったが、お面を被っているため、その表情が黒川に見えなかったのは言うまでもない。

黒川「お前なんかに翼を渡せるか!」

互いにペンを手にし、対峙する二人。
先に動いたのは潤慶だった。黒川に向かって走る!

潤慶「くらえーっ!!」
黒川「そうはいくかっ!」

黒川は鼻メガネを投げ付けた。

べしっ。

それは見事に潤慶にヒット。

潤慶「うっ・・・」
黒川「今だ!!」

潤慶がひるんだ隙に黒川は彼のお面をはぎ取り、素早く頬にペケ傷を書いた。

黒川「・・・これでよしっと」
潤慶「う〜・・・もう負けちゃったか・・・残念。さすが椎名の親衛隊の一人なだけあるね」
黒川「(親衛隊・・・?)それはもういいってι ・・・じゃあな」

黒川は鼻メガネを拾い、そのまま被服室を出ていこうとしたが。

潤慶「あ! ちょっと待ってよ」
黒川「何だ?」
 
潤慶は床に落ちているお面を指差した。

潤慶「コレは持っていかないの?」
黒川「・・・遠慮しとく」


<残り21人>




その頃、1−3の教室では。


須釜「う〜ん、ハリセンかー。使えるのか使えないのか微妙な武器だねー。・・・でも、まあいいか。何が何でも優勝して椎名くんと旅行に行くんだv」

一人悦に入る須釜。
と、そこへ。

?「そーは問屋がおろさへんで!」
須釜「! 誰?」
吉田「吉田光徳、人呼んでノリックや!(バーン)」
須釜「ノリック? ・・・何かMrマ○ックみたいだねー」
吉田「ほっとけ!!」
須釜「まぁ、せっかく自己紹介してもらったとこ悪いけど・・・死んで(?)もらうよ」

須釜はハリセンとペンを構え吉田に向かっていく。
と、吉田がポケットから何かを取り出した。

吉田「コショウ攻撃食らえや!」
須釜「ふっ・・・はーっくしょん! ぶわーっくしょん!!・・・って、何すんのさ!(スパーン!)」


コショウの舞い飛ぶ中、須釜が吉田に攻撃を食らわせる。しかし吉田はにやりと笑うと、手早くハリセンを奪い取った。

吉田「ツッコミがなっとらーん!!(バシーッ!!)」
須釜「ぐわっ・・・(ドサ)」
吉田「キュキュキュのキュッ・・・と。よっしゃ、一丁上がり!」

須釜の頬には見事なペケ傷が書かれていた。

須釜「・・・完敗だよ・・・悔しいけどね。でも、次は負けない」
吉田「まぁ、お前もよーやったわ。ハリセンはもらってくで」
須釜「うん、やっぱりそれは関西人の君が持つべきものだよ」

吉田は須釜に笑顔を向けると、1ー3の教室を後にした。

吉田「よっしゃ、この調子でどんどん倒していくでー!!」


残り20人>




杉原「監督もよくやるよねぇ・・・」

屋上で呑気にしゃぼん玉をしながら呟いているのは杉原。ちなみにシャボン玉セットは彼の支給武器だった。

杉原「椎名さんと一緒に旅行行けるってことで燃えるみんなもみんなだけど、まあ ぼくも人のことは言えないか。何せ彼と二人きりで旅行、なんてチャンスなかなかないものね。
・・・それにしても、椎名さんの好きな人って誰なんだろ? やっぱり黒川くんかなぁ・・・」
?「そこの奴ーーー!! お前は完全に包囲されとるばい、おとなしくしろっちゃ!!」

後ろから大声がしたので杉原は振り向いた。そこには拡声器を手にした高山がいた。

杉原「・・・うるさいなあ。こんな至近距離でわざわざ拡声器なんか使わないでよ。それに”完全に包囲”って、君一人しかいないじゃない」
高山「やっ・・・やかましいわ!!」
杉原「だからうるさいのは君だって。拡声器使うのやめてよ。その声聞いて誰かが来るよ?」
高山「その前にお前ば倒せばいいことたい、椎名との仲を進展させるために、お前を倒しちゃる!」
杉原「・・・どうぞ。やれるものなら・・・ね」

杉原はそう言うとゆっくりと開眼していく。
何かどす黒いオーラのようなものがその体から発せられたように高山は思った(何の話だこれは・・・)。

高山(くっ・・・すごいプレッシャーを感じるばい・・・)


高山が杉原の闘気(?)に気押されて動けないでいると、杉原はさっと彼に近付いて、頬にペケ傷を書いた。ついでに、逆の頬に”うるさい”と書いた。

高山「って、あ〜〜〜!!」
杉原「ぼくに勝とうなんて十年早いよv(にっこり)」

杉原は腹黒さを含んだ笑みを高山に向けた。

杉原「さてと・・・じゃあそろそろ行こうかな。君も拡声器持って教室戻りなよ」

杉原はスタスタと階段を下りていった。高山はしばらくその場で呆然としていたが・・・

?「そこにいるのは誰やっ!」

突如佐藤が現れた。

高山「あ〜っ! お前はパツキン男!!」
佐藤「? 誰やっけ?」
高山「九州選抜の高山昭栄たい!」
佐藤「さよか。・・・ってお前もう負けとるんやないか(しかもうるさいって何やろ)」
高山「・・・お前、あいつに会わんかったか?」
佐藤「あいつ?」
高山「俺を倒した奴ばい。名前は知らんけど、多分東京選抜の奴やな。背が低くて細目の・・・」
佐藤「ああ、あいつか。俺も名前は知らんけど顔は知っとるわ。別に会わんかったで」
高山「そっか。入れ違いになったんかもな」
佐藤「そいつがどーかしたんか?」
高山「そいつは要注意人物ばい。お前も気を付けた方がいいたい」
佐藤「忠告どーもな。せやけど俺はそんな奴には負けへんで。姫さんとラブラブになるためにはな♪」


佐藤は高山に背を向けて去ろうとした。しかし、そんな彼を高山が呼び止める。

高山「せや、パツキン男!」
佐藤「何や?」
高山「もう一度サッカー勝負せろちゃ! 俺の地獄のよーな鎖のディフェンス見せちゃる!!」

佐藤「今はそんなことやっとる場合ちゃうやろ―――!!(ビシッ)」

佐藤は高山にわざわざツッコミを入れ、それからその場を後にした。


<残り19人>




将「誰とも会わないなぁ・・・。みんなどこにいるんだろう」


将は1階から2階へと続く階段を昇っていた。

将「さっき屋上から声が聞こえたけど、行った方がいいかなぁ? でも武器がこれだし・・・」

と、将が取り出したのはタコ糸。

将「何に使えって言うんだかね・・・」

階段を昇り切った将は、目に付いた理科室に入った。
が、

山口「あ」
将「・・・誰?」

そこには既に先客がいた。

山口「俺は東海の山口圭介」
将「ぼくは東京都選抜の風祭将だよ」
山口「・・・・・・(のん気に自己紹介しあってどーする・・・)」
将「・・・ねぇ、君も翼さんのこと好きなの?」
山口「え?・・・あ、ああ。ほとんど一目ボレに近いけどな。だから、もっと彼のことが知りたいって思ってる」
将「そっか・・・。でもね、」

と、将はペンを取り出し、構えた。

将「君みたいな、セリフもろくにない新キャラに翼さんを取られるわけにはいかないんだ」
山口「・・・悪かったな」
将「というわけで、山口くん覚悟!!」

将は消えるフェイントを使い、山口の懐に飛び込んだ。

将「もらったぁ!!」
山口「くっ!」

しかし山口はとっさに避けたため、将のペンは山口の頬に一本傷を書いただけだった。

山口「危なかった・・・」
将「まだまだっ!」

将はなおも攻撃を繰り出すが・・・

山口「えいっ!!(ピュー)」
将「(ビショッ)え!? 冷たっ・・・」

将の顔に水がかかった。山口が支給武器の水鉄砲で将を撃ったのだ。

山口「スガが言っていただけのことはあるな・・・あんた中々やるじゃん。
てなわけで、戦略的撤退―――!!」

山口はそのまま逃げていった。それに気付いた将は小さく舌打ちした。

将「逃したか・・・。でも、今度会ったら絶対にしとめる! 誰であろうと、翼さんを渡すわけにはいかないからね。翼さんの貞操は僕が守る!!(メラメラ)」

萌え・・・もとい、燃える将だった。


<残り19人>




真田「なあ・・・結人」
若菜「何だよ、一馬」

早々に合流し、とりあえず共闘することにした真田と若菜は1階廊下を歩いていた。

真田「なんかさぁ・・・そこの男子トイレからぼそぼそ声が聞こえるんだけど・・・」
若菜「え〜?」

若菜が耳を澄ますと、確かに声が聞こえてきた。

若菜「あ、本当だ。怖っ」
真田「誰かがいるんだろうけどさぁ・・・」
若菜「・・・トイレで闘うってのは、嫌だよな・・・」
真田「・・・・・・」
若菜「・・・・・・」
真田「・・・別んとこ行くか」
若菜「そうだな。便秘でうなってるのかもしれないしな・・・」

というわけで二人はその場から去っていった。その話題のトイレでは・・・

不破「生理的欲求がある以上、こうしてトイレで待ち伏せしていれば、そのうち誰かが来るはず・・・しかし今のところ誰も来る気配が無い・・・。
俺の考えが間違っているのか? それともゲーム開始して間もないからか・・・(ブツブツ)」

不破が考察中でしたとさ☆


<残り19人>




天城「椎名・・・」
翼「天城・・・」

美術室で、この二人は対面を果たしていた。正確に言えば、天城がいた美術室に翼がやってきたということだが。
動揺する天城を尻目に、翼はつかつかと中に入ってくる。

翼「お前の武器って何だった?」

翼はいきなりそう尋ねた。

天城「・・・折り紙だ」
翼「ふーん・・・。俺の武器は消しゴム。いくら殺し合いじゃあないってもさ、こんなんどーやって使えってんだよ。もう笑うしかないよね」
天城「・・・」
翼「・・・天城はさ、このゲームのこと知ってて帰国したの?」
天城「いや、監督が早急に日本に着て欲しいっていうから。理由は聞かなかったが・・・」
翼「理由ぐらい聞けよ。」
天城「・・・・・・」
翼「まぁいーけど」

二人の間に沈黙が流れる。
先に口を開いたのは、天城だった。

天城「・・・椎名、いい機会だから言っておくが、俺はお前が好きだ」
翼「・・・うん」
天城「でもお前には好きな奴がいる。・・・そしてそれは俺じゃない。そうだろう?」
翼「・・・ああ」

天城は溜め息をつくとペンを構えた。

翼「天城!?」
天城「俺は・・・このゲームをおりる」

天城はそう言うと、自分の頬にペンを走らせた。

天城「たとえ俺が優勝しても、椎名の気持ちが俺にないなら意味がないしな・・・。誰かと無駄に争うことも、もう俺はしたくない・・・。
・・・このゲーム、おまえが優勝して、好きな奴と一緒に旅行に行くといい。それが一番の結末だ・・・」
翼「天城、待てよ・・・」
天城「・・・・・・」

制止する翼に耳を貸さず、天城は美術室を出ていこうとする。

翼「天城・・・行くなよ!」
天城「・・・椎名?」
翼「まだ・・・ここにいろよ」
天城「・・・・・・」

それでも引き止める翼に天城は振り向いた。翼は意を決したように言う。

翼「シリアスなシーンの時に言いにくいんだけど・・・」
天城「何だ?」
翼「お前がさっき書いたの、ペケ傷じゃない」
天城「・・・え?」

困惑する天城に翼は手鏡を突きつけた。天城はそれを覗きこむ。
鏡の中の天城の左頬に書かれていたのは・・・。

天城「こ、これは・・・ι」
翼「ペケ傷書こうとしてうずまき書いてどーすんだよ。つーか、一体どーすればそーなんだよ」
天城(じゃあ俺はうずまき模様の顔であんなシリアスなシーンを・・・)
翼「そのまま教室戻ったら赤っ恥だったぜ・・・。でもまあ、(キュッキュッ)これでよし、っと」

翼はうずまきが書いてあるのと逆の頬にちゃんとペケ傷を書いた。

翼「プッ・・・なんか一層マヌケになったな」
天城「ほっといてくれ・・・」

がっくりと肩を落とす天城だった・・・。


<残り18人>