第一回・椎名翼杯バトルロワイアル☆
<プロローグ>
今日も今日とて、東京都選抜チームは都内某中学校に招集されていた。
・・・が、少しいつもと違うところは、集合場所が校庭ではなく教室だ、ということ、そしてメンバーが純粋な都選抜メンバーだけではない、ということである。
将「・・・何か、今日はメンバーが変わってるね」
水野「そうだな」
将が首を傾げるのは無理も無かった。
今日招集されたのは、都選抜メンバー12人をはじめ、他の選抜から数人、選抜に所属してない者数人、そして海外にいるはずの者2人だったからだ。
ざわめく一同。
・・・と、前方のドアががらりと開いた。
玲「みんな、おはよう」
にっこりと笑いながら、都選抜の監督・西園寺玲が教室内に入ってきた。
翼「・・・玲、今日はこんな偏ったメンバー集めて、一体何企んでんの?」
玲「嫌ねぇ、企んでるだなんて。とっても楽しいことよ♪」
皆、玲の笑顔に思わず引きつる。玲は咳払いを一つして。
玲「今日はみなさんに・・・殺し合いをしてもらいます」
一同「ざわっ・・・」
桜庭「お、おい・・・これってひょっとして・・・ι」
上原「巷で噂のバト笛ってやつ!?」
藤代「じゃあ俺達、殺し合いしなくちゃなんないの!? そんなの俺やだよ〜!!」
三上「うるせぇ、バカ代!(ゴン!!)」
藤代「ギャ〜三上先輩が殴った〜〜!!」
三上「騒ぐな―――!!!」
渋沢「落ち着け、二人ともι」
玲「そうよ、静かにしてくれないと・・・残念だけどあなた達を撃たなくちゃならないわ」
玲は懐から銃を取り出し、構えた。教室内に緊張が走る。
玲「バトルロワイアルを始める前に・・・見せしめに一人死んでもらいましょうか」
銃を手にしたままぐるりと教室内を見回す玲。
翼「玲・・・俺達がバトルロワイアルなんて、・・・殺し合いだなんて、何かの冗談だろ?いつものお遊びだろ?」
玲「・・・・・・」
翼「何とか言えよっ!」
玲「冗談よ♪」
がたがたがたっ。
一同はずっこけた。そんな皆を尻目に、玲はうっとりと語り始める。
玲「バトルロワイアル・・・あれは面白いわよねぇ。でも、実際にあなたたちに殺し合いなんてさせるわけないでしょ」
黒川「(ボソ)いや、あんたならやりかねないぜ・・・」
玲「柾輝、何か言った?」
黒川「別に。」
郭「じゃあさっきまでのは・・・」
玲「え・ん・しゅ・つv」
一同、またもずっこける。
玲「これもただの水鉄砲だもの。今からみんなには闘ってもらうけど、本当の殺し合いじゃないから安心して」
そう言うと玲は二つ手を叩いた。すると、前方のドアからマルコが入ってきた。何やら大きな段ボール箱を引きずっている。
マルコ「ハイ、持ッテキタヨ」
玲「ありがとう、マルコ」
と、玲は段ボール箱を開け、中から一つのバッグを取り出した。
玲「この中には支給武器が入ってるわ。とは言っても、殺傷力はほとんど無いけど。あとはこの中学校の見取図と参加メンバーの名簿、それからペンと手鏡が入っています」
若菜「ペンと手鏡?」
玲「そう、これでこんなふうに」
玲は一度言葉を切り、マルコに近付いた。そして彼の頬にペンを走らせた。
玲「相手の頬にペケ傷を書くの」
一同「るろ剣か―――っ!!」
玲「書かれたらその人はその時点で失格ね。でも、一本傷とかならまだチャンスはあるわ。ペケ傷じゃなければ大丈夫。だから相手に何か書かれたら手鏡で確認なさいね」
佐藤「姐さん、ちょお質問があるんやけど」
玲「何? 佐藤くん」
佐藤「ペケ傷を付けんのは、ほっぺやないとあかんの?」
玲「ええ。頬じゃないと駄目。けど、頬なら右でも左でもいいわ。あ、それから、相手の顔に落書きしても別に構わないわよ♪」
一同「オイオイ・・・」
玲「それと、このゲームには制限時間があるの。9時から始める予定だから、15時までの6時間以内に決着を付けること。時間内に勝負が付かなかったら、優勝者はなしよ」
不破「俺も質問がある」
玲「何かしら、不破くん」
不破「このゲームをやることに意味はあるのか?」
郭「そうだね、確かに監督が一人で楽しんでるような・・・」
玲「ふっふっふ・・・ちゃんとあなた達にもメリットはあるわよ。優勝者には賞品が出るわ!」
桜庭「賞品?」
藤代「何が出んの?」
玲「それは・・・これよっ!」
玲が指を鳴らすと、いつの間にか教室の四隅に来ていた照明係がある人物を照らした。
その人物とは・・・
翼「・・・え?」
玲「優勝者には、翼と2泊3日の国内旅行ご招待〜!!」
うおおおおっ、と一同が沸く中、翼だけがキョトンとしている。
玲「フフッ・・・このゲームはね、バトルロワイアルの名を借りた、椎名翼争奪戦なのよ!!」
水野「どーりでメンバーが偏ってるわけだ・・・」
杉原(てゆーか何で監督は椎名さんを好きな人達を知ってるんだろう?)
玲「私に不可能は無いのよ、杉原くん」
杉原「人の心中を読まないで下さい」
翼「って、玲! 勝手に人のこと賞品にしないでくれる!? 大体それじゃ俺にはメリットが無いじゃねーか!」
玲「ふふ・・・私はあなたのこともお見通しよ。ズバリ、あなたはこの中に想い人がいるわねっ!」
翼「うっ・・・ι」
一同「何ィ―――!!?」
玲にびしっと指を差され、翼はわずかに赤面すると共に冷汗を浮かべた。驚いたのは他のメンバーである。
翼のその反応が、玲の言うことが本当であることを証明しているからだ。
玲はいたずらっぽい笑みを翼に向けた。
玲「あなたが優勝したら、その人と旅行に行くといいわ。ただし、あなた以外の人が優勝した場合はその優勝者と一緒に行くのよ。拒否は認めないわv」
翼「・・・・・・」
桜庭「一体誰なんだ? 椎名の好きな奴って」
鳴海「この中にいるってもな〜」
玲「さあ、ルール説明に戻るわよ。えっと・・・禁止エリアだけど、一時間毎の放送の時に言うわ。その部屋にマルコが鍵をかけていくから。あ、校舎の外に行っちゃ駄目よ。この校舎内だけで闘ってね。
そうそう、放送の時に失格者の名前も読み上げるから。ペケ傷が付いた人は、この教室、3ー1に戻ってきてね。それから、このペンは油性だからそう簡単に落ちないはと思うけど、洗って落とそうとしないでね。
あとは・・・そうね、この学校はあくまでも厚意で貸してもらってるから、備品とかはあまりいじらないこと。もし壊したりしたら弁償してもらいます。それと、ゲームが終わったら、敗者のみんなで大掃除よ」
一同「え〜〜〜?」
玲「ブーたれないの。嫌なら優勝することね。それじゃあ、できるだけ怪我の無いように気を付けて、精一杯闘いましょう」
マルコ「グットラック」
玲「じゃあ、9時になったら1番の李くんからスタートよ。次の人は2分のインターバルをおいて出発」
マルコ「モウ9時ダヨ、アキラ」
玲「あら、本当。それじゃあ、1番の李潤慶くん」
潤慶「ハイ」
玲「韓国からわざわざ来たんだから、頑張りなさいね」
潤慶「もちろん(ニコッ)」
玲は潤慶にバッグを渡しながら微笑みかける。
そんな調子でどんどん皆が出ていき、教室内には玲とマルコだけが残った。
玲「皆がどんな闘いをするのか楽しみだわ」
マルコ「アキラモヒトガ悪イネ」
玲「あら、何のこと?」
マルコ「校舎ノ至ルトコロニ監視カメラガ仕掛ケラレテルコト、言ワナカッタジャナイカ」
玲「だってその方がみんなの自然な闘いが見られるじゃない♪」
マルコ(・・・何ダカ誰ガ優勝シテモ、アキラノ一人勝チナ気ガスルナァ・・・)
何はともあれ、こうしてゲームは始まったのでした。
<残り22人>