<第四章:ひとまず小休止>


掌の上にあるのは、茜達が落としていった水晶玉。
聖はじっと見つめてみる。
不思議な輝き。見るものすべてを魅了するような。
「それにしても、」
薫の声が聞こえ、少なからず水晶玉に見入っていた聖は、はっとそちらに意識を向ける。
「東京に戻ってきたのはいいけど、どうやって操られた人達を探そうかしら?」
操られた人達があの寺を離れてから、もうずいぶんと時間が経ってしまっている。今街の入り口に来たばかりの聖達の目には、怪しい人影など何も映らない。平和な日常がここにある。
「う〜ん、虱潰しにあちこち当たっていくしかないんじゃねぇ?」
「それとも、手分けして探していきます?」
相談する三人の輪に混じりながら、聖はまた別のことを考えていた。
この水晶玉。
あの少女達は、"薬と水晶玉で東京の街を混乱させる"と言っていた。薬とはおそらく、あの赤べこで撒かれた物。そして水晶玉は、今聖の手の中にある。
どうやって使うのか。操られてる人達とどう関係があるのか。見当はつかないけれど。
或いは、操られてる人達が見つかれば、何か掴めるだろうか?
(けど、どうやって見つければいい?)
無意識に、水晶玉を握り締める。途端、水晶玉が淡く光を放ち、キィィンと耳鳴りがした。
「な、何この音?」
「聖君が持ってる水晶玉?」
薫達も異変に気付き、聖が持っている水晶玉に目を遣る。たゆたう光を湛える水晶玉を見て、聖はふと思った。
(何かに、共鳴してる・・・?)
そのまま、感じるままに走り出す。何が何だか分からないまま、その後を当然薫達も追う。
確かだという証拠はない。けれど、聖は、或いは彼の勘だったのかもしれないが、確かに何かを感じた。それが何なのかは、分からないけれど。彼は、まるで水晶玉が導いてくれるように思ったのだ。
「わぁ――っ!!」
細い路地の先、子どもの悲鳴が聞こえる。通り抜け、広い道に出ると、その光景が目に入った。正気でない瞳をした男が、子どもを殴りつけようとしている。
「あいつも操られてるんだ! やっつけるか?」
「いや・・・」
少し遅れて到着した弥彦の言葉に、聖は首を振った。
どうしてそうしようと思ったのか、聖自身、よく分からない。ただ、彼は、水晶玉を持つ手を上げ、高く掲げた。水晶玉に太陽光が反射して煌めく。そしてまた、キィィンという音が辺りに響いた。
「ぐっ・・・?」
操られていた男が頭を抱えてうずくまる。その様子を不思議そうに見守るしかない薫達。
男は頭を振って立ち上がった。
「あ、あれ? 俺こんなトコで何してんだ? 早く帰んなきゃかーちゃんに叱られちゃうぜ」
その目に狂気の色はない。何事もなかったかのように、男は飄々と去っていく。
「ああ怖かった。いきなりあのおじさんが殴ろうとするんだもん、止めてくれてありがとうね」
殴られそうになっていた子どもも、礼を言うと元気に駆けていった。聖は笑顔で手を振って見送る。
(よかった・・・)
ほっと安堵の息をつく。
あの子は無事だった。操られた人も元に戻せた。自分が彼らの力になれたことが、何だか嬉しかった。
と、突然がしっと肩を組まれる。満面の笑みの弥彦がそこにいた。
「聖、すげーじゃねぇか! 一体何したんだ?」
「うん、何となくやってみたんだけど、うまくいって良かったよ」
少しずれた返答に、弥彦は思わずずっこけそうになる。
「いや、そうじゃなくてさ・・・・」
「でもこれで、やっぱりこの水晶玉が鍵なんだって分かったわね」
「ええ、どうやら、操られてる人達を元に戻すことができそうですね」
薫と宗次郎の言葉に頷きながら、聖はまた水晶玉に目を遣った。すでに光は消え失せ、音を発してもいない。ただ静かに、聖の掌に納まっている。
「そうと分かったら、操られてる人達を片っ端から探していこうぜ!」
弥彦に同意し、言葉を返そうとした聖、けれどその場に、威勢のいい声が響き渡る。
「見つけたよ、このドロボー!!」
「いっ!?」
驚いて振り向くと、そこにいたのは、茜、碧、それから藍、あの少女達。
悔しそうな顔をして、聖達を睨みつけている。茜の言葉を聞きとがめて、弥彦が食って掛かる。
「ちょっと待った、ドロボーたぁ何のことだ!?」
「よくもいけしゃーしゃーと! わたい達を追っ払って、根津様の水晶玉を盗んだでしょーがっ!!」
ビシッと指を差して高らかに告げる碧に、宗次郎はさらっと。
「盗んだも何も、あれはあなた達が勝手に落としてったんじゃないですか」
「うるさーいっ! ねぇ、根津様ぁ、みんなあいつらがいけないんですよぅ」
そして藍が振り向いた先から。長身の若い男がゆっくりと姿を現した。
逆立てた前髪が、目を引く。後ろの方の髪は結っていて、着流した紫の着物の上を流れている。顔や胸に彫られた刺青や、手にした刀などから、明らかに堅気の人間でないことが分かる。
茜達の言葉から察するに、あれがおそらく、根津だろう。
「てめえら、茜達を可愛がってくれたそうだな」
「先に東京の人達を困らせてたのは、あなた達でしょう!」
ずい、と出てきた根津に少しも怯むことなく、薫ははっきりと言い放つ。
「わけの分からない術で人を操るような真似、させておけないよ」
聖も薫と並び根津達と対峙する。弥彦、宗次郎も同様に。
聖は水晶玉を、戦闘の邪魔にならないようにそっと懐に忍ばせた。
「てめえらには関係ないこった。だが、邪魔するようならぶっ殺してやるぜ」
根津はすっと鞘から刀身を抜き放ち、刀を左手に、鞘を右手に持ち、二刀流のように構える。
「根津様、やっちゃってくださいよぅ」
「あんた達、根津様が来たからには、もうおしまいだからね!」
「ケッチョンケチョンにしちゃうんだから!」
茜、藍、碧もそれぞれの獲物を構える。聖達も刀や竹刀を構える中、薫がそっと皆に耳打ちする。
「あの子達三人とはさっき闘ったから、彼女らの闘い方は分かるわよね?」
「ああ」
「だから、弥彦に聖君は、さっき闘った子と戦って頂戴。ただ、宗次郎君、」
「はい?」
「あなたはあの根津って男と闘ってほしいの。あの男は、女の子達と実力の差がかなりあると思うから・・・・。私達の中で今一番強いのは、多分、あなたでしょう? だから、宗次郎君にお願いするわ」
「―――はい、わかりました」
「一応言っとくけど、殺すなよな」
「あはは、分かってますって」
「私は藍って子と闘う。・・・じゃあ、いくわよ!」
だっと地を蹴って、聖達は茜達に向かっていく。先程茜達とは闘ったばかり、闘い方も、実力も大体は分かる。
負ける相手じゃない!
「翔鳥紅脚!」
「飛鳥翠爪裂!」
「踊鳥藍打襲!」
負けられないのは茜達も同じ、今度は最初から全力で技を繰り出してくる。けれど。
聖は茜の蹴りをかわし、弥彦は碧の突きを弾き、薫は藍の乱打を見切って。
反撃に転じ、三人の少女達は呆気なく崩おれる。
「茜、藍、碧! てめえら、よくも・・・」
「おっと、あなたの相手は僕ですよ、根津さん」
配下が倒され、怒りのあまりそちらに向かおうとした根津を、宗次郎が木刀の切っ先を向け、止める。
「調子にのんじゃねぇぞ、ガキが!」
根津は一度後退し、宗次郎の木刀を引き離す。そして刀を持つ手にぎゅっと力を込めると、宗次郎に斬りかかっていった。
「うらあぁああ!!」
右と左、双方から攻めてくる根津。けれど滑らかに、宗次郎は攻撃をかわしていく。宗次郎は微笑を絶やさず、対する根津は、なかなか彼を仕留められない苛立ちを隠せない。
「すごい・・・」
聖が感嘆した風に呟く。
「悔しいけど、やっぱあいつは強ぇんだな」
「そうね。それに、宗次郎君は実力の半分も出してないわね、きっと」
と、弥彦と薫。
茜達を倒し、自然と根津と宗次郎の闘いに目が行く。聖達は、宗次郎の戦闘中の動きを改めて、目の当たりにした。軽やかな身のこなし。鋭い剣速。
根津とて、決して弱くはない。けれど、彼以上の使い手の前では、剣筋も鈍って見える。
と、根津の着物の袂から、何かが滑り落ちるのを聖は見た。
「くそッ、喰らいやがれ! 赤狗!」
根津が宗次郎に放ったのは、刀と鞘を交差させ、相手を切り裂く技。しかし技が届く前に、宗次郎は跳躍し、根津の後ろに降り立っていた。そうして気付いた根津が振り向く前に、宗次郎は横薙ぎで木刀を叩き込んだ。
「がは・・・っ!」
脇腹に鋭い一撃を受け、根津はその場に膝をつく。ふうっと息をついて木刀で肩をとんとんと叩いている宗次郎。
その様子を見て、地に伏していた茜達は一気に青ざめた。
「ね、根津様まで負けちゃうなんて・・・」
「もうダメだよ、こんな奴らに勝てるわけないよ!」
「お、おい、茜、碧? 何言ってんだ?」
茜と碧の言葉に狼狽する根津。茜達はさっと身を起こして、
「ごめんね、根津様。わたい達、死ぬのヤなんだ!」
藍がそう捨て台詞を残すと、三人はそのままその場から逃げていく。根津は愕然と、聖達はぽかんとしてそれを見送った。
「茜! 碧・・・藍まで!?」
驚愕で顔を歪め、力無く肩を落とした根津に、弥彦があっさりと言い放つ。
「部下に見捨てられちゃあ、てめぇもおしまいだな」
「さて、白状してもらいましょうか。一体何の目的で、こんなことをしたのか」
薫も詰め寄るが、根津はまだ強い眼差しで、
「うるせぇ! この俺が、こんな女や子どもに負けるはずねぇ!」
「でも、現に負けたじゃない、宗次郎さんに」
「ぐっ・・・」
食って掛かるも、聖にさくっとそう言われ、言葉に詰まる。
「こ・・・こんなの何かの間違いに決まってらぁ!」
「何度向かってきても、変わらないと思うけどなァ・・・」
それでも根性で立ち上がり、なおも向かってこようとする根津に、宗次郎は軽く溜息をついて木刀を握り直した。
と、その時。
根津と宗次郎の間を何かが通り過ぎ、二人の動きを止めた。その何かが落ちたところを聖は見遣る。ただの石ころだ。そしてそれが飛んできた方向に、今度は視線を向けた。
背が高く、額には赤い鉢巻を巻いた、逆立った髪の男が一人、立っている。白い服を着た体は筋肉が引き締まっていて、只者ではないということが聖にも分かった。鋭い目がこちらを睨んでいる。
(誰? まさか、新手の敵か・・・?)
そう思い、聖は身構えかけたが、
「左之助!?」
「相楽さん?」
弥彦と宗次郎はそう声を上げ、どうやら顔見知りらしいことが分かった。相楽左之助、という名前のようだ。
一方根津は、そんな弥彦たちの反応に気付かず、戦いの邪魔をされたことにイラつきながら、左之助を怒鳴りつける。
「誰だ、てめぇは!?」
「てめえこそ、一体誰なんでぇ? この左之助様に断りもなく、こんな大騒ぎをやらかしやがってよ!」
根津の怒声に少しも怯むことなく、左之助は拳をボキボキと鳴らしている。左之助も、根津達が騒ぎを起こしたことを面白く思っていないようだ。
「そこの嬢ちゃんとボウズは・・・・っと、何でか宗次郎と新顔もいるようだけど、まぁいい、とにかく、俺の知り合いなんだ。放っちゃおけねぇな」
「うるせぇ、てめぇも殺す!」
標的を左之助に変えて、根津は刀を振りかざす。振り下ろされた刃を、左之助は左手でがしっと掴んだ。血が少し流れたが、左之助本人は至って気にすることは無く、むしろ楽しそうで。
「へっ、面白ぇ、そっちがその気なら・・・」
左之助は右手ですばやく根津の腕を掴むと、
「うおおおぉおお!!」
「げッ!?」
そのまま豪快に投げ飛ばした。根津の体は宙を舞い、思いっきり地面に叩き付けられた。
土埃が舞う。強く体を打ったせいで茫然としている根津と、何故か生き生きとした表情をした左之助。
そして聖はというと、左之助の荒技に引きつった苦笑いを浮かべていた。
(すごいとは思うけど、な、なんかムチャクチャな人だなぁ・・・・)
「さーて、じゃあ話してもらおうか? 何でこんな騒ぎをやらかしたのか、ってことをよ」
根津の襟元を掴んで身を起こさせ、左之助が詰め寄る。根津はふいと目をそむけ、何も話す気は無いようだ。
「けっ、誰がてめぇらなんかに・・・」
「ほぉ、まだ痛い目見たいってんだな、てめぇは?」
握り拳を作って見せる左之助に、聖は慌てて駆け寄る。
「ちょ、ちょっと待った! もう勝負はついてるんだから、穏便にいこうよ!」
「あぁ? んなこと言ったって、こいつ何も話そうとしないじゃねぇか」
「そう、だけど・・・でも、」
「聖君、情報は聞き出せる時に、きっちり締め上げて聞いておかないと」
「そ、宗次郎さんまでそんな怖いこと言って〜〜!!」
困惑する聖に、いつの間にか側まで来ていた宗次郎が、ぴっと人差し指を立てて言い放つ。
確かにそれも一理ある。一理あるが・・・。
思わずずっこけてしまう聖である。
(何で仲間割れしてんだ、こいつらは・・・)
根津がそう呆れてしまうのも無理はない。ただその一方で、どうにかこの状況を脱しようと策を巡らせてはいたのだけれど。
「・・・ええい、まだるっこしい! とにかく俺はこいつをもう一発殴る!」
「ええぇっ!?」
あまりに無茶苦茶な左之助の結論に、聖は心の中でそんな無茶な!と突っ込んでいた。
根津に迫る左之助の拳。しかし。
「情けないわね、根津」
妖艶な女性の声が響き、皆揃ってそちらに目を向ける。
根津が、由利、と呟く。
風変わりな着物を着た、長い髪を上の方で一括りにして結った女性。おそらく、彼女が声の主、根津が言った由利だろう。唇に紅を引いたその美しい顔には、根津に対する嘲笑が少しばかり浮かんでいて。
「ちょっと様子を見に来たら、こんなことになってるなんて。やっぱりあんたには、荷が重すぎたってわけ?」
「・・・・・っ」
悔しそうに唇を噛み締める根津。由利は肩にかかる長い髪をうるさそうに払い、溜息をついた。
「まあいいわ。とにかく、戻るわよ」
そうして今度は、聖達のほうに向き直り、
「そういうわけなの。じゃあね」
「なっ、待ちやが・・・・」
左之助の言葉は、由利の放った煙幕によってかき消された。白い煙が辺りを覆い、それが晴れた時にはもう、根津と由利の姿はどこにも無かった。
咳き込みながらも、先程まで根津たちがいた方向を見据える薫。
「逃げられた、みたいね」
「ちっくしょう、何なんだあいつらは?」
まんまと逃げられた苛立ちから、側にあった小石を蹴り飛ばしながら左之助が問う。
「近頃、町で人が急に暴れだすって事件は知ってる? 私達、その原因を作っている犯人を追ってるの」
「その騒ぎなら聞いたぜ。嬢ちゃん達がその騒ぎについて調べてたとはねぇ。それはそうと、その新顔と宗次郎まで加わってるってのはどういうわけでぇ」
「まあ、色々あって」
薫が簡単に経緯を説明する。聖のこと。宗次郎のこと。根津達のこと。
左之助はふんふんと頷きながら話を聞いていた。
「ふーん、成程ねぇ。そういうことなら俺も協力しようじゃねぇか。俺は相楽左之助。よろしくな」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
ぺこっと頭を下げる聖。
「あぁ、そんな畏まらなくたっていいぜ。遠慮はなしってことよ。な、聖?」
「あ、はい!」
(最初は無茶苦茶な人だと思ったけど・・・・)
でもそれだけじゃない、大きな温かさもこの人から感じる。
力強く笑う左之助を見て、聖はそう思った。
と、左之助は今度は宗次郎に向かって。
「京都で剣心と闘ったお前と、今度は共闘するたぁ妙な話だが・・・・」
「あはは、そうですね」
「ま、よろしくな」
剣心と宗次郎のあの闘いの場に居合わせていただけあって、少しいぶかしんでいた左之助も、案外、すんなりと彼を受け入れた。それは、左之助のおおらかな気質にもよるのかもしれないが。
(そういえば・・・)
聖はふと、きょろきょろと足元を見回した。一間ほど離れたところにそれはあった。先程の宗次郎との闘いの中、根津が落とした物。拾い上げると、それは割符だと分かった。掌に乗るほどの木片に、なにやら地図のようなものが書かれている。東京、そして新座村、という場所が読み取れた。
「何だそれ?」
「さっき、根津が落としてったんだ」
弥彦に尋ねられ、聖は言いながら、ほら、とみんなに見せる。
「これは・・・根津達を追う手がかりになりそうね」
「新座村か、結構近くの村だな」
さっそく行ってみるか?と弥彦。けれど薫は静かに首を振る。
「もうすぐ日も暮れるわ。一日に色々あって、聖君も疲れちゃったと思うし、一旦道場に帰って、一休みしましょう。新座村に行くのは明日ってことで」
「そうだな。東京での騒ぎは一段落したみてぇだしな」
左之助も同意し、一行は茜色の差して来た空の下帰路についた。
「そういえば、道場でも言ったけど、薫のメシは無茶苦茶不味いぞ。今のうちに、腹括っとけよ、聖に宗次郎」
「え、ああ、大丈夫だよ。不味いって言っても、食べられないほどじゃないでしょ?」
「いや、薫のメシは食うんだったら飯抜きのほうがマシだ、ってくらいだ」
「そ、そんなに酷いの・・・」
聖の引きつった笑顔に、冷や汗がたらりと流れる。
一体どんな味なんだ。想像もつかない。
「弥彦ぉ〜〜・・・聖君に変なこと吹き込まないでちょーだい!」
「だって無理して食って腹壊したら大変じゃねぇか」
「うーん確かに。最近はずっと剣心がメシ作ってたから、腕も鈍ってるかも知れねェしな。ただでさえ不味いメシが、なおさら酷く・・・」
「左・之・助ェ〜〜・・・」
「いてててて! 耳を引っ張るな耳を!」
「あはははは、みなさん楽しそうですね」
「「「どこがっ!?」」」
呑気な宗次郎の感想に、薫、左之助、弥彦の三人が揃って突っ込む。それを聞いて、宗次郎またはくすっと笑って。
「でも、そういうことなら、僕がご飯作りますよ。家事はやり慣れてるし」
「えっ? いいの? でも、悪いわよ」
「構いませんよ。しばらくご厄介になるんですし、これくらいはさせて下さい」
宗次郎の申し出に、戸惑った薫ではあったが、
「え、じゃあ、お願いしようかな〜・・・」
彼の気持ちを汲んで、了承することにした。
「お前がそう言うんなら、しばらく頼むぜ」
「そうだな(どんなメシが出てくるかは知らねーが、少なくとも、嬢ちゃんのよりはマシだろう)」
そしてその日の夜。
薫よりも遥かに美味い料理を作った宗次郎が、しばらく神谷家のおさんどんをすることに決定したのは言うまでも無い。





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根津編、終了です。結構イベントカットしましたが、それでも長かったなぁ。物語の最初だししょうがないか?
宗次郎in十勇士陰謀編なんて、私の妄想の塊のようなシリーズを、楽しんでくださる方々がいて、本当に嬉しい限りです。
主人公は聖ではありますが、宗次郎も影の主役〜といった感じ(私の中では)なので、出張ってくると思います。
それと聖。好きなのに〜うまく書けない(泣)。どーにも影が薄いですな。彼のキャラをどう立たせればいいか、正直模索しながら書いています。
文章も、最初はどうも自分のいつもの書き方で書けなくて、でも三・四章くらいでようやくいつもの感じが取り戻せてきたよーな気がします。それにしても、戦闘シーンは書くのが苦手だ。描写が薄い(汗)
とまぁ、こんな感じではありますが、これからもお付き合いしていただけたら幸いです。
さて、次は穴山編です。

2004年4月19日








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