HAPPY BIRTHDAY!!










2月14日。
その日はスフォルツェンド第一王子・リュートの誕生日。









しかしリュートは忙しい。
王子と大神官という立場に加え、我が身を省みるよりも先に他の誰かを助けたい、という性格も相まって、いつも目まぐるしく動いている。
東に魔族に襲われている国があれば行って撃退してやり、西に守備の緩みがあれば行ってその穴を埋め、南に難民がいれば行ってその保護をし、北に魔族の進軍あらば行ってそれを食い止める。
誕生日くらいゆっくりしたら、というホルンの言葉は「母さん、ボクは大丈夫だよ」と満面の笑みで一蹴だ。誕生日という特別な日すら、リュートにとっては1年の他の364日と大差ないらしい。これが他の誰かの誕生日なら、きっと全力でお祝いするのだろうに。
(…出来が良すぎるのよね、リュートは)
贅沢な愚痴にホルンは溜め息を吐く。
任務の報告の為につい先程までホルンの部屋にいたリュートは、フルートを全力であやしそして盛大に泣かれ、それからまたいそいそと飛び出していった。引き留めてもあっさりとかわされ、怪我の痛みを隠しまた戦場へ赴こうとする。誕生日なのに。
日頃激務に追われる息子に誕生日くらい穏やかに過ごして欲しいと願う親心。しかしそれを叶えられない自分が不甲斐無い。
夜には誕生パーティーが予定されているとはいえ、あの分ではリュートはそれまであちこちを飛び回っているだろう。止めたところで先程同様、大人しく言うことを聞きはしないに違いない。
(でもこれじゃ…もうこうなったら、多少強引にでも休ませるしかないわね)
ホルンは自身の用意したプレゼントを思い、密やかに決意を固めた。







「リュート王子、誕生日おめでとう!」
「おめでとー!!」
リュートが城の一角の廊下を歩いていると、後方から勢いよく走ってきた子ども達に囲まれた。
リュートの法衣に四方から纏わりつくようにしている彼らは、サックスやマリー、ティンをはじめ、それぞれ色とりどりの包みを大切そうに抱えている。
「リュート王子、これ美味しいお菓子! おやつの時にでも食べて!」
「僕はティーカップ!  あったかいもので一息ついてね!」
「私とティンからはね、アロマオイルとバスソルトのセット!」
「リュート兄ちゃんの疲れが少しでも取れるように!」
「何がいいか色々迷っちゃったよ〜」
「僕もー!」
「私もー!」
みな待ちきれないといった様子で、口々に己のプレゼントの中身を語る。そこにあるのはわくわくした、キラキラした無邪気な笑みだ。
リュートは全員の顔を見回してにっこりと笑って、それぞれの贈り物を受け取った。全員から受け取ると、両手で抱えても溢れそうな程だ。
プレゼントの内容より、子ども達が自分のことを考えて一生懸命に選んでくれたのであろうことがリュートは嬉しかった。
「ありがとうみんな。すっごく嬉しいよ。大切に使うね」
リュートが笑みを浮かべると、子ども達はまた一斉に騒がしくなる。中には万歳をしたり、お互いにハイタッチをしたりしている子もいる。
「喜んでくれて良かった〜!」
「何にしようか悩んだもんね!」
「ちゃんと使ってね〜!」
「忙しいからってしまいこんじゃうのは駄目だからね!」
「あはは…分かってるよ」
見透かされているようなマリーの言葉にリュートは内心どきりとする。
大切に使う、というのは紛れもない本心だが、忙しいあまりつい後回しにしてしまうであろう自分の姿も、リュートは容易に想像がついたので。
「本当だよ〜絶対だよ〜!」
「約束だからね〜!」
「うん、分かった分かった」
他の子ども達からも念を押され、指切りまでして絶対に使うと約束させられてしまった。
魔族からは震えるほど恐ろしがられるスフォルツェンドの魔人といえど、子どもには弱い。
「最後に、これはみんなから! ほらクラーリィ!」
もじもじと最後列にいたクラーリィがサックスに押されてリュートの前に出た。
クラーリィは何かを背中に隠したまま、恥ずかしそうにリュートを見上げている。
「何だい? クラーリィ」
「お、王子! 誕生日おめでとうございます!」
クラーリィは真っ赤な顔で手にした物をリュートに向けてばっと差し出した。
それは花束だった。大振りの百合にバラ、チューリップ。その花びらの赤やピンク、白に黄色、そして葉の緑といった色のコントラストが何とも鮮やかだった。
純粋に美しいと思える、そういったまさに華やかなプレゼントだ。甘い香りが辺りに漂う。リュートは感嘆の声を漏らした。
「わぁ…綺麗だね。どうもありがとう、クラーリィ、みんな」
他のプレゼントを落とさないよう器用に花束を受け取ると、リュートは穏やかに微笑んでクラーリィや皆を見渡す。
普段戦場を駆け巡っているリュートだが、元より多くの動物に好かれる性質だ、こんな風にでも花鳥風月を愛でる姿は、実によく似合う。
色彩豊かな花束が、リュートの優しい笑顔を尚引き立てる。
「良かった〜リュート兄ちゃんが喜んでくれて」
「うん、ホントホント〜!」
子ども達の方もぴょこぴょこと跳ねて喜んでいる。リュートがクラーリィから順にそれぞれの頭を撫でてやっていると、一人の兵士がばたばたとこちらにやってきた。
「たっ、大変ですー、王子ー!」
「どうしたんだい、そんなに慌てて…」
「実は…城の花壇が何者かに荒らされておりまして」
「えっ!?  ………」
思わずリュートが子ども達に視線を移すと、サックス達は一斉にばつの悪そうな顔になっていた。
頭を掻きつつじりじりと後ずさる子ども達。
「えへへ…」
「おこづかいが足りなくなっちゃって…」
「でもちょっとだけだよ、ちょっとだけ」
「そうそう、大部分はちゃんと買った物だから」
「ごめんなさ〜い」
「それじゃね、王子〜」
「リュート兄ちゃん、おめでと〜!」
子ども達は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
あとにはぽかんとしたままのリュートと、怒りに震える兵士のみが残される。
「こらーお前らー!」
「まぁまぁ…」
怒る兵士をリュートは宥める。
「ボクを祝おうとしてやったことだし、大目に見てよ」
「そうですな…花もリュート王子を祝う為に使われるなら、満足でございましょう」
意外にも、兵士はあっさりと矛を収めた。花壇荒らしの行為は褒められたものではないが、子ども達なりにリュートを思ってしたことだ。無論、リュートの顔を立てた、というのもあるだろうが。
「花を活ける花瓶を部屋に用意致しましょう」
「うん、ありがとう」
兵士に礼を言って、リュートはもう一度花束を見た。
こんな風に穏やかな気持ちで花に触れるのは、久し振りかもしれなかった。







「リュート王子、誕生日おめでとうございます」
「ありがとうパーカス」
子ども達からのプレゼントを自室に置きに行った後、今度は廊下でパーカスに出くわした。
恭しく祝辞を述べたパーカスは、彼に似つかわしくない大きな茶色の熊の縫いぐるみを抱えている。
「どうしたの? それ…」
訊きながらリュートは気が付く。ただの熊ではない。
その熊の頭には明るい藍の毛髪があしらわれ額には金の十字架、首に下げられたタグにはご丁寧に『魔人』の文字。上半身は水色のシャツまで着込んでいる。
これは、どう考えても誰かさんを模しているようで…。
「リュートテディベア。略してリュートベアでございます」
「リュ、リュートベア…?」
真面目に説明するパーカスが却っておかしく、リュートは思わず口元に手を運ぶ。真剣な顔に可愛い熊。何ともミスマッチ。
「スフォルツェンドおもちゃ商会が開発、製作。商品化を願い出ておりまして、これは試作品でございます。
見ての通りリュート王子がモデルですので、市販化の際には売り上げの何割かはスフォルツェンド国庫にも入る予定でございます。予測売り上げ数は全世界で百万体、或いはそれ以上かもと言われておりまして、ただ今コストに応じた適正価格を検討中だとか…もっとも王室ではまだゴーサインは出ておりませんがね」
「はぁ…」
べらべらと述べたパーカスは、そうした情報には然程興味のなさそうなリュートを見て一つ咳払いをする。
「ま、ともあれこちらはリュート王子に是非に、と」
幼子を抱え上げるように差し出されたテディベア、もといリュートベアをリュートは受け取った。なめらかでふわふわした触り心地で、ぎゅうと抱きしめてみると安心する温かな匂いがした。
つぶらな瞳に小さな鼻が愛らしい。モデルが自分であることはともかく、子どもが気に入りそうな作りの熊だ。リュートは何となく、熊の手を持って握手をするように上下に揺らしてみた。
「似てるかなぁ」
リュートが少々の照れ臭さを持って抱えた熊を見ていると、
「恐れながら、優しげな雰囲気が似通っておられます」
パーカスからはそう返ってきた。
「臣下から王子へ個人的な贈り物はできませぬが、少しでも王子のお心が休まりますように」
「ありがとうパーカス」
パーカスは温かな目でリュートを見ている。パーカスはリュートが幼少の頃より王家に執事として仕えている。分を弁えてはいるものの、祝福したいという気持ちは確かなのだろう。
それが分かり、リュートは自然笑みを浮かべた。
「それとですね、王子。ホルン様がお呼びでございます」
「母さんが?」
改まった様子のパーカスの一言に、リュートは熊を抱いたまま首を傾げた。







「リュート、女王命令です。あなた午後から任務は休みなさい」
リュートがリュートベアを自室に置いてからホルンの部屋に赴くと、開口一番こう言われた。
何故突然そうしたことを言われたのか分からず、リュートは目をぱちくりさせる。そうして姿勢を正すと、
「あの、お言葉ですが陛下…午後は国境の守備配置の確認が」
「誰か他の者に任せなさい」
「ですが」
「ですがじゃありません」
「だけど母さん!」
「だけどでもありません!」
言い募った言葉にもホルンはにべもない。いつにも増して厳しい態度をリュートは不思議に思う。
「でも、母さん!」
「でもでもありません!! あーもう、一体いつまでやるのよこのやり取り!」
ホルンはそれまで座っていた椅子から立ち上がると、つかつかとリュートの下へ歩いてきた。それから、人差し指をついとリュートの顔へと向ける。
「い〜い? リュート、あなたがスフォルツェンドや近隣の国々の為に力を尽くしたいのはわかるわ。でも、あなた働き過ぎよ。このままじゃ体壊しちゃうわ」
まるで悪戯っ子を窘めるような口振りである。
ホルンの心配を、けれどリュートはやんわりと受け流す。
「このぐらいボクは平気だよ」
「いいえ、あなたは無茶し過ぎです。とにかく夜のパーティーまで休むこと。これは母としてのお願いでもあるのよ」
「……」
リュートが曖昧に微笑んだままでいると、ホルンは切なそうに目を細め、手を握ってきた。ホルンの柔らかな手がリュートの傷だらけの手を包み込む。今は回復魔法はかけられていないのに、肌の熱とは違う何か仄かな温かいものが、伝わるような気がした。
「リュート。あなたには本当に感謝してる。そしていつもあなたばかりに無理をさせて、本当に申し訳なく思ってる。たとえあなたが望んでやっていることだとしても……
あなた自身のことも大切にして。お願い」
リュートはしばらく何も言えなかった。
この国を守ること。魔族に対抗する力のない、近隣の国を守ること。魔族と戦うこと。その為に自分が傷つくこと。
それらは望んでやっていることで、何の苦でもなかった。むしろ、他の誰かが傷つくくらいならこの自分が傷ついた方がいい、そう思ってリュートはずっと第一線で戦ってきた。その為にずっと魔法の腕を鍛えてきたし、それだけの実力も兼ね備えていることも分かっていた。だからこそ己が、最前線に立たねばなるまい、と。そしてそのことで母を苦しめていることも、リュートは分かっていた。
母としては無理をする息子を少しでも休ませたくて、こうした強硬手段に出たのだろう。憂いを帯びるホルンの目をじっと見つめ返して、リュートはやっと観念した風に頷いた。
「……分かった。じゃあ、お言葉に甘えて」
「こっそり転移魔法で逃げちゃ駄目よ」
「……はい」
先に釘を刺されてしまった。
がくりとうなだれるリュートを見てやっと茶目っ気のある表情に戻ったホルンは、うんうんと頷いて白い包みに赤いリボンでラッピングしたものを取り出してきた。
「よし。それじゃあハイ、誕生日プレゼント。開けてごらんない」
言われたとおりにリュートがリボンを解き包みを開けていくと、中からパジャマや枕らにアイマスク、ブランケットといった物が出てきた。
「母さん…これ」
リュートは水色のチェックのパジャマを手にしながらホルンを見る。ホルンは自慢げにふふふと笑っている。
「いいでしょう、私お手製の安眠セットよ〜!」
「このパジャマの裏の『リュート最強! 世界一の魔法使い』って刺繍恥ずかしいんだけど…」
リュートはややひきつった顔でホルンにその部分を見せた。
パジャマの背中側に笑顔のホルンの刺繍がしてあり、周りにはそう印字されていた。いくら人に見せないパジャマとはいえ、これは流石に恥ずかしい。
リュートの突っ込みに、ホルンはさめざめと泣き出した。
「何で!? 一生懸命縫ったのに! やっぱり私がいつもあなたに無理させてるからっ…!」
「あああごめんよ母さん!  ありがとう、とっても嬉しいよ」
リュートはおたおたとフォローに回る。柄はともかく、同じく忙しい母が政務やフルートの世話の合間を見て、一針一針縫ってくれたことは確かに嬉しかった。
ピンクの花柄の枕もこれまたピンクのブランケットも、これまたゆっくりを身を休めて欲しいという母の愛。
機嫌を直したホルンはにっこりと笑って
「寝る時はそれ着てゆっくり休むのよ」
と言った。リュートは「はい」と今度は快く頷く。
するとホルンはああそうそう、と掌を軽く打ちつけた。
「それから、夜のパーティに先駆けてスラーから宅急飛行便が届いてたわ。あなた〜!」
「何だホルン」
ひょっこりと部屋の隅からチェンバレンが姿を見せた。
影が薄いあまりホルンにもリュートにもこれを書いている奴にも推敲している今この時まで存在を忘れ去られていたが、父もちゃんとこの部屋にいたのであった。
「例の物持ってきて〜」
「分かった」
チェンバレンは奥に引っ込むと、両手で持ち上げる程の小包を持ってやってきた。
「こちら、スラー聖鬼軍の皆様からですって」
「おめでとう、リュート。父からはちゃんと後でいいものを渡すから、楽しみに待っていてくれ」
チェンバレンは力強く笑うと、重そうな小包をリュートに手渡した。リュートが持ってみると実際、ずっしりと重かった。
「ありがとう、父さ…」
「それじゃあなた、リュートの代わりに国境守備配置の確認よろしく♪」
「エッわし出番これだけ!?」
「ほらほら、早く早く! 魔族がこの隙に来たら大変だから」
「父なのにこの扱い…ちくしょー!!」
ホルンに急かされ、チェンバレンは半泣きでワープ魔法で消えていった。
それを見送ると、リュートはスラーから送られたという小包に意識を戻す。
日頃親交のあるスラー聖鬼軍は確かに夜の宴に来る予定になっているが、重くて邪魔になるからと敢えて先に寄越したのだろうか。
「へぇ…何だろう?」
一度絨毯の上に降ろすと、リュートはその包みを丁寧に剥がしていく。中から木箱が出てきたので蓋を開けると、箱にはぎっしりと本が詰まっていた。珍しい魔法書や兵法書の他、物語や小説などもあるようだ。
一番上のメッセージカードには『リュート王子おめでとうございます。リュート王子のこれからのご活躍と健康をお祈りしています。スラー聖鬼軍より
PS,王子の役に立ちそうな育児書も見つけたのでお送りします』といった旨が書いてあった。
リュートは本の中から茶色の革表紙の物を取り出し、きらきらした目でページをめくり出した。本のタイトルは『上手な子どものあやし方』。以前、スラー聖鬼軍の長兄コキュウに「フルートがなかなか僕に懐いてくれなくてさー、あやしても全然泣きやんでくれないし…」と愚痴ったことがあったが、どうやらそれを覚えてくれていたらしい。
しばらく本の内容に目を通し、めぼしい情報を見つけたリュートはダッシュで部屋から出て行く。手早く用意をしまたダッシュでホルンの部屋に戻る。
その時リュートが持っていた物に、ホルンは顔を引き攣らせた。リュートが手にしていたのは、どす黒い液体がなみなみと入ったコップ。何やらえぐいような生臭いような、表現しがたい異臭を放っている。
リュートはホルンの傍らのベビーベッドで眠っていたフルートを抱き上げる。目を覚ましむにゃむにゃと目を擦るフルートに、リュートはその怪しげなものを満面の笑みで突きつけた。
「ほら! フルート! 魚とか野菜を食べると頭のいい子になるんだって! ミキサーにした特別ドリンク作ったから飲んでみて!」
「えーい離乳食始めたばかりの妹に変なもの飲まそうとするんじゃなーい!!」
「ほぎゃあああ! ほぎゃあああああ!!」
フルートは首をぶんぶんと振って全力で嫌がっている。寝起きに変なものを近づけられて最高に機嫌が悪い。
ホルンはリュートからひったくるようにしてフルートを抱きかかえた。
「何でだろう…本には魚とか野菜がいいって書いてあるのに…」
リュートは確認するようにぱらぱらと育児書を捲った。
確かに本にはそう記されている、だが何でも組み合わせればいいというものではないということにリュートは気が付いていない。気が付いていないまま、人参やキャベツ、ホウレンソウなどと一緒にサバやアジをミキサーにかけて特製ドリンクを作製した。
そんなものは大人でも飲まん。
「よしよしフルート…お兄ちゃんに悪気はないから許してあげてね」
フルートはまだ涙目でぐずぐずしている。ホルンは抱っこしてゆらゆらしながらフルートに話しかける。
「今夜はパーティーよ…あなたはまだ分からないかもしれないけど、大きくなったら、フルートも一緒にお兄ちゃんのお祝いをしましょうね」
「そうだね…早くそんな日が来るといいな」
フルートのふくふくしたほっぺたをつつきながら、リュートはそんな日を夢見る。
可愛らしいドレスを着た妹が、精一杯のおめかしをしてパーティーに現れる。まだ舌ったらずな言い方で「お兄ちゃんおめでとう。プレゼントよ」とリュートに包みを差し出してくる。背伸びをして、笑顔で必死にこちらを見上げて。そしてそれを受け取った時、どれだけ嬉しいことだろうか…。
あと二、三年もすれば訪れるであろう未来に、リュートは思い焦がれた。
「さあ、それじゃあそろそろ部屋に戻って一息つきなさい。パーティーの準備ができたら呼びますから」
「はい、母さん。それじゃあね、フルート」
名残惜しかったが先程の約束も守らねばならない。
リュートはホルンやスラー聖鬼軍からのプレゼントを持って自室に戻った。











リュートの自室の寝台の上には、今日一日で皆から貰ったプレゼントが並べられていた。
物はそれぞれ違っているが、どれも皆、リュートの誕生と幸せと、束の間でも平穏をと願って贈ってくれた物。
物そのものに対してよりも、何より皆のその気持ちが尊く、有り難かった。
「ありがとう、みんな…」
その祝福をリュートはしっかりと噛みしめる。
多くの人間がこんなにも自分を祝ってくれたこと、それが本当に本当に、嬉しかった。











その後リュートは、花を部屋の花瓶に飾りその美しさを改めて愛で、お菓子と紅茶を味わい、ゆっくりと読書を楽しんだ。
夜のパーティーでの盛大なお祝いの後は、バスソルトを溶かした湯船にゆっくりつかり風呂上がりには部屋でアロマオイルを焚いてリラックスし、新しいパジャマを着てリュートベアを抱いて、リュートはぐっすりと眠ったのだった。






END
















リュート誕生祭2015絵チャットにて、リュートに何をプレゼントしたいか…という話になり、そこから発想した話です。
話の中に出てくるプレゼントはチャット参加者皆様(私含む)の提案ですが、癒し系グッズが多い辺り、リュートへの愛を感じます。
ほのぼの目指したんですが切ない要素も若干入ってしまいました…。


あと作中で自ら突っ込んでますが、本当に推敲で読み返してあそこに差し掛かるまでちーさんの存在忘れてましたw
何はともあれ、遅くなったけどリュートハッピーバースデー!
2015,2,19