第128回バトルロワイアル

対象者:東京都選抜メンバー22名(補欠含む)

場所:都内某島

優勝者:なし





所要時間:0時間





ゲームオーバー





「バトルロワイアル!? 俺達が?」
「そんな・・・マジかよ・・・」
「このメンバーで殺し合う?」


練習中に突然拉致された都選抜メンバー達は、バトルロワイアル法で自分達が選出されたと知り、騒然とした。
監督やコーチも、見せしめのために殺され。
それを見た少年達の心によぎったのは、
恐怖よりも、怒り。


「さて、そろそろ始めるが、何か質問は?」


にやにやと、質の悪い笑みを浮かべる担当教官。その周りを取り巻く、同じような笑顔の兵士達。
その側には、無惨にも放置されたままの監督達の死体。
にやにやと。
嘲笑うように。見下す、ように。



再来する、怒り。






―――どうして。



―――どうしてこんな奴らに、



―――従わなくちゃいけないんだ!?






「すみません、先生」
挙手したのは渋沢。
東京都選抜メンバーを束ねるキャプテン。
「えーと・・・君は確か、渋沢くんだったね。一体何かな?」
立ち上がった渋沢は、一呼吸置いて、言った。
「最後に、みんなに話がしたいんですが、いいでしょうか?」
教官の笑顔が一瞬引きつり、すぐに元に戻る。
ちゃっ、という音を立てて、兵士達は銃を構えた。
それを制し、教官は苦笑して答えた。
「まぁ、特別に許可しよう。冥土の土産ということでね」
「ありがとうございます」
一礼して、渋沢は皆に向き直った。
そして。



「俺は、ゲームには乗らない」
はっきりと、言い放つ。



「みんなにも、乗らないで欲しい」
懇願するように。けれど、何かを訴えるような。




「一緒に、戦って死のう」




渋沢は見据える。教官と兵士を。
その先にいる、腐った大人達を。
彼の意思を汲み取り、
他の少年達も、みな同じ瞳で。




「お前ら、正気か?」
兵士の一人が、引きつった笑みを浮かべた。




「正気どころか、本気だよ」
立ち上がったのは椎名。
「みんなと殺し合うなんて、できない」
と、風祭。

「何か言われっぱなしってのは、性に合わないんだよね」
郭。
「どーせ死ぬんなら、少しでもカウンター食らわせたい気分、ってとこかな〜?」
鳴海。




みんなの気持ちは一つ。
戦って死ぬ。ただし、仲間と戦うのではなく。




「このメンバーで殺し合いするくらいなら、


だったら、いっそ・・・!」





向かっていく渋沢。他の者もそれに続く。
交錯する銃声と叫び、意志、その思い。
玉砕覚悟で飛び掛っていく少年達。
できる限りの反撃を。出来れば、出来得るのなら、何とか逃げ出すために。
仲間との殺し合いで死ぬよりも、仲間と協力して、立ち向かった方がずっといいから。






たとえ結果が、目に見えていたとしても―――。


















全員がゲームを下り、スタートすら拒んだ。
始まる前に迎えたゲームオーバー。
死という形で括られていても。
少年達にとっては、それは勝利以外の何物でもなかった。







<END>














所要時間0時間のゲームオーバー、ってのが個人的なポイント。
題的には、ラストの方にあるので、普通にゲームオーバーってな話を書くのが筋なんでしょうが・・・短編だし、何せひねくれ者なもんで(笑)
思いついたままにつらつらと書いたんで、スピード展開・・・。
バト笛100のお題初挑戦な作品。






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