信じる事って難しい




同じチームの奴らとか、
それだけならまだしも、飛葉の奴らとか、あの将とか、渋沢とかにも裏切られて。
いや、裏切ったというよりも、彼らはこのゲームの最中に、何かが切れたと言うべきか。
とにかく、殺されかけたり、目の前で誰かが死ぬところを見たり、酷い死体に何度も遭遇したりして。
俺自身、狂う一歩手前まで、もしかしたら来ていたのかもしれない。
この人殺しゲームの趣味の悪さには―――何度吐き気を催したか。
ゲームに踊らされてるだけだって、頭では分かってるんだけど、もう、誰も信じられなくなってて。
それでも、あいつに会うまでは、意地でも死ねないと思ったのに。
あいつだけは―――きっと自分を保ってるって、そう思っていたのに。






「姫さん・・・」
「・・・シゲ・・・!」



再会したのは、どこぞの森の道の中。
再会できたのは偶然、本当に偶然、なんだと思う。
無数の葉に太陽の光を遮られて薄暗くて。
それでもはっきりと分かる―――服に付いた、くすんだ赤色。それは血。紛れもなく。
髪にすら、その色が見えて。
でもシゲ自身、怪我をしている様子はなく。





頭の中が真っ白になる。
半ば無意識に、俺は銃口を彼に向けた。






「お前、殺したんだな・・・!」



声が、震える。
銃口も、揺れ動いて。



「信じてたのに、お前だけは、誰かを殺したりしないって―――」



俺の言葉に、シゲは何も返さない。
ただ、少し驚いたような顔をしただけで。
否定も、肯定も、弁解も、何もかも言わない。
それが更に、俺の絶望に拍車をかける。
そして、その末の怒りにも。






「お前だけは、信じてたのに・・・!」







俺は引き金を引いた。
弾は、見事にシゲの胸を貫いた。
そのまま彼の生死を確かめることなく、俺は逃げるようにその場を去った。
けれど、後の放送で、彼は確かに死んだことを知った。



























今はゲームもすでに終わって、幸か不幸か俺が優勝。
生き残りたかったわけじゃない。死にたくはなかったけれど。
俺が殺したのは、後にも先にもシゲだけで、会場を彷徨い続けているうちに、惰性で優勝を手にしてしまった。
きっと、俺以外の奴らが、うまい具合に相打ちになったりしたんだろう。
このゲームの説明を受けた学校へふらふらと帰る途中、幾分冷静になった頭で、俺はぼんやりと考える。
シゲの服に付いていたあの血は、別に彼が殺した者の血―――すなわち、返り血なんかじゃ、なかったんじゃないかって。
もしかしたら、死に逝く者を抱き上げたりして、それで付いてしまったものだったかもしれないって。
もちろん、シゲは本当に誰かを殺してしまっていた可能性もあるけど。
今となっては、もう、確かめる術もない。



一つ、思うことは。俺があの時、もっとあいつのことを信じていたら、俺があいつを殺すことはなく、あいつも俺に殺されることはなかったのかもしれない。
でも、逆に、信じていたから裏切られたと思った。許せなかった。だから、ほとんど衝動的に殺したんだ。
大切だった人を、自分の手で。
信じるのも、信じ続けるのも、絶望してまで、なお信じようとするのも。
俺には、できなかった。
或いはシゲもそうだったかもしれない。他の奴らも。だからゲームが終わったんだ。









ああ、本当に。



信じる事って、難しい。











<END>











これもタイトルから思いついた話、ですね。
文が結構すらすら浮かんで、1時間くらいで書き上がっちゃいました。遅筆の私にしては珍しい・・・。ま、短い話ではありますが。
CPは、最初黒川×将にしようと思ってたんですが、シゲ翼の方がらしいかな、と思ってこうしました。







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