死が二人を別つまで


辿り着いた其処は教会。このゲームに、酷く似つかわしくない。
薄汚れた白い壁と、天使が描かれたステンドグラスと、尖塔に備え付けられた、本来なら祈りを捧げるはずの十字架と。
きっとここでは過去に、何組かの男女が永久の愛を交わし合ったこともあるのだろう。


”病める時も健やかなる時も、死が二人を別つまで、変わらず敬い、愛することを誓いますか?”


「死が二人を別つまで―――か」
聖書の文句を思い出して、水野はぽつりと呟いた。
「そんな相手に出会うこともなく、俺達は死んでいくのかな」
「は? いきなり何言ってんの?」
彼の独白を聞きとがめ、翼はどこかの民家から調達したパソコンの画面から、一瞬、視線を水野に向けた。そしてまた、すぐにキーボードを叩き始める。
「死ぬとか、そんな後ろ向きなこと言ってんなよ。この俺と合流できたんだからさ。絶対に、こんなゲームぶっ壊してやる! 水野、お前ももちろん手伝うんだからな!」
翼は、いつもの、あのフィールドで浮かべるのと同じ、自信に満ち溢れた笑顔で。
ああ、と水野は感嘆の溜息を付く。
こんなゲームに巻き込まれてもなお、希望を失わない強い意志。自身を失っていない。それは自分にも言えること。多分、彼と逢えたから。
彼の強さに引っ張られる。いつもどこか遠くに感じていたそれに。
彼と再会できて良かった。本心から思う。
「そうだな。・・・じゃあ、俺は何をすればいい?」
「そうこなくっちゃ! まずは、そうだなー・・・」
自分も、できる限りのことをしよう。
このゲームを脱出するにしても、その最中で命を落とすとしても。
ようやく巡り合えたチームメイト、彼と力を合わせて。
そう、いつか。
死が二人を別つまで。







<END>








カップリングではありません。あくまでも水野&翼。「死が二人を〜」というと結婚式のアレが浮かんできて、水野にそれについてぽつりと言わせてみたかった。そんな話。


2003年9月15日





                 BACK