まさか俺なんかが優勝するなんて、正直全然思ってなかったけど



虚無感



誰もいない砂浜を一人で歩く。
そう、誰もいない。
だってもう、みんな死んじゃったんだから。
「俺が優勝かぁ・・・・」
たった一人だけ、殺した。暗闇の中、神社の階段から思い切り突き飛ばした。
顔は見なかった。見るのが怖かった。
ただ自分が死にたくなくて、それだけでチームメイトを衝動的に殺した。逃げるようにその場から去って、結局それが誰なのかなんて分からないままだった。
禁止エリアも解除され、自分を狙う者も誰一人いない今では、確認しに行くことは可能だった。
でも行きたくない。知らずに済むのなら、その方がいい。いや、むしろ・・・・・知りたくない。
最後に生き残った一人だけが家に帰れると、それに縋って自分は手を血で染めたけれど。それでも殺したのは一人だけだったとか、そういう問題じゃなくて。
結果的に自分はみんなを殺して、今、ここにこうして生きている。
「俺が、優勝か・・・・」
もう一度呟く。どこか信じられない気持ちがあるのも本当で。
だって、渋沢とか郭とか椎名とか、すごい奴はいっぱいいたのに、自分なんかが優勝で。
―――だけどもう、みんないないんだ。
あれほど願っていた生存。他者を蹴落としてまで、チームメイトを殺してまで勝ち得た命。
それなのに。
「でも・・・・・」
どうしてだろう。
何だかちっとも、嬉しくないんだ。





優勝者:上原淳







<END>





初の上原主演。でも何か薄い話。さらっと書こうとは思ってたけど。


2005年4月10日



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