一人なんて、慣れていたのに



独り




生き残るためには殺す。
それはこのゲームの大前提だ。
ただし俺は、俺を殺そうとして来る奴だけ殺した。言わば正当防衛だ。
襲い掛かってきたのは様々。元はチームメイトだった者、顔くらいしか知らない者。
少しも躊躇わなかったと言えば嘘になるが、それでも、自分の命は守らなくては。そう思い、殺してきた。
とは言っても、数えるほどだけ。なのに、何の因果か、この俺が優勝してしまった。
俺以外、皆死んだ。生きているのは俺一人だけ。
俺がサッカーを始めるきっかけになった風祭。
共に幾つもの試合をこなしてきた水野や佐藤、選抜の皆。
キーパーとして大切なことを教えてくれた渋沢。
直接俺が手を下してなくても、誰かに殺されて、或いは自ら命を絶って、とにかくそれぞれに何らかの理由があって、死んでいった。
皆、俺がサッカーを知ってから出会った人達だ。
今はもう、この世にいない。


”サッカーは仲間と一緒にやるから楽しいのさ”


その渋沢の言葉が不意に頭に浮かんだ。
確かに、一人ではサッカーはできない。
それに、皆とサッカーしていて、多分、俺は、楽しかったんだと思う。
その感覚は、それまでおそらく感じたことがなかった。誰かと一緒に、何かを楽しむ、なんてことは。
けれど、その、一緒にやってきた皆はもういない。もう、一緒にサッカーを楽しむことは絶対にできない。
会うことすら叶わない、生き残ったのは、俺一人なのだから。
一人なんて慣れていたのに。サッカーを始めるまでは、むしろずっと一人だったのに。
なのにどうして、こんなに胸の奥がずっしりと重く、締め付けられる感じがする? 何故、無性に苦しい?
多分感情で表すなら、哀しいとか、寂しいとか、切ないとか、そういったのが混ざって一つになったような、そんな感じで。
ふと、一緒にサッカーをしてきた皆のことを思い出す。サッカーの試合はもとより、練習風景や何気ない会話のやり取り、そういった思い出が浮かんでは消えた。
ほんの数日前まで当たり前だった日常。それを共にする皆がいないということに改めて気付かされて、また、胸が痛んだ。
皆はもういない。俺だけがここにいる。
・・・ああ、そうか。
やっと分かった。
これが”独り”ということか。



<End>







これまでバト笛100のお題を10こくらい書いてきて、多分まだ書いてなかった不破の話です。
不破を書きなれてないのがバレバレですな・・・誰だこれは(汗)。掴みにくいキャラだ・・・・。



2003年11月30日






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